「休業中の売り上げはほぼゼロ。一日も早く現金が必要だ」
4月9日から休業していたホテル「ファミリーリゾート・フィフティーズfor舞浜」(東京都江戸川区)を経営する梶川文男社長(71)は、資金繰りへの不安を明かした。
新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた中小企業の資金繰りを支援する「持続化給付金」を5月1日の受け付け開始とともに申請したが、1か月近く待てども届かなかった。5月末にようやく振り込まれたが、休業期間も地代や人件費がのしかかる。6月1日から営業再開したが、6月の予約はわずか2件で、先行きは見えない。
持続化給付金はオンライン申請のみで手続きが完了し、2週間後には振り込まれるというのが政府の触れ込みだった。しかし、5月29日時点で、140万件の申請に対し支給は80万件(1兆円超)と6割弱にとどまる。申請する企業も受け付ける行政側もオンライン手続きに慣れておらず、写真データとして添付した書類の不備や確認に手間取るケースが目立った。
イベントや演劇などの舞台道具を手がける横浜市の中小企業の男性経営者(53)は、まだ持続化給付金が手元に届かない。「このままでは7月に貯金も底をつく」と不安は募る。
帝国データバンクによると、新型コロナの影響による倒産は200社を超えた。雇用情勢も急激に悪化している。「戦後最悪の経済危機」が現実味を帯びる。
政府は2度の補正予算で事業規模234兆円という巨額の対策費を積んだ。だが、必要な支援が迅速に行き渡らない。浮かび上がったのは日本の行政のデジタル化の遅れと非効率さだ。
政府が個人向けに用意した1人あたり10万円の現金給付も、まだ大半の国民に届いていない。迅速な支給が目的のはずのマイナンバーカードを使ったオンライン申請ではトラブルが相次ぎ、43自治体が「郵送手続きの方が早い」とオンライン受け付けを中止した。米国などでは個人の番号制度を銀行口座と連携させて素早く現金を支給しているのに対し、日本はマイナンバー制度の活用が遅れている。
感染の「第2波」が広がれば、企業の倒産や失業者が爆発的に増え、さらなる支援が必要な事態となる。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは警告する。「行政手続きが危機時の緊急性を想定して作られていなかった。支援策をいくら作っても、行き届かなければ安全網にならない」
posted by ナナシ=ロボ at 05:00|
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